江戸幕府 農村の統制・村請制度
村請制度とは、領主が村単位で農民を統治する方法で、年貢徴収・完納の義務、行政業務、管理業務、領主が発する法令の順守などを村が下請けする制度である。
これらの業務は、村役人である名主・組頭により行われた。百姓代は名主や組頭の村政運営を監視する役目で、この3つは村方三役と呼ばれる。
村民は、入会地(共同利用が慣習的に認められている山林・原野など)や用水を共同利用し、田植え・稲刈り・屋根葺きなどの時には結・もやいなどと呼ばれる共同作業を行った。こうした農民同士の結びつきと村内部の上下関係を利用したのが村請制である。
農民の人口は、林業や漁業従事者も含め全人口の約85%を占めた。1農村の規模はおよそ50~100戸で、石高は1村平均で400石余りであった。村は、生産と生活のための共同体であると同時に、領主の行政における最小の単位であった。
村の役割の第一は税の徴収で、領主が村あてに納入すべき年貢高を命じたもの(年貢割付状)に基づいて、村役人は百姓の耕地面積に応じて徴収し、領主に完納する義務を負っていた。その他には、以下のものがある。
①戸籍の作成
②移動、転居に際しての村の証明
③幕府・領主からの法令の記録
④風紀の取締り
⑤入会地における用水路や橋、堤防などの維持・管理
*五人組
犯罪の防止や年貢の納入に連帯責任を取らせる制度が五人組である。隣近所を5戸1組にして互いに助けあうとともに、互いに監視させ犯罪防止や年貢の納入に連帯責任を負わせた。
農村の統制・百姓の税負担
1.領主が領地ごとに賦課するもの
①年貢=本途物成(ほんともとなり)
田畑にかかる税。石高の40~50%を納めることが村全体の責任とされた。(四公六民、五公五民)
年貢の課税方法には、主に検見法と定免法の二つの方法があった。
検見法は、1年ごとに収穫高を調査した上で課税するもので、年貢の額は、その年の収穫高に左右された。
定免法は、過去の収穫高を基にして一定期間同額の年貢を課税するもので、年貢の額は、収穫高に左右されず一定の額が確保された。
②小物成(こものなり)
田畑以外の山野河海の利用や農業以外の副業などにかかる税。
③高掛物(たかがかりもの)
村高(村の石高)や持高(土地の石高)にかかった税。
④運上・冥加
特定の仕事に賦課される税。
⑤上納金
臨時の事業や財政の穴埋めのために賦課される税。
2.幕府が国別・地域別に賦課するもの
①国役(こくえき)
藩から命令された土木工事に参加する。
②村役(そんえき)
村のための土木工事に参加する。
③助郷役(すけごうえき)
荷物運びなど宿場の応援。
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