山東出兵 蒋介石 1927年 

2023年5月2日

1927(昭和2)年から1928年にかけて、蔣介石率いる国民革命軍の北伐を阻止し、満州・華北侵略のために田中義一内閣によって行われた3次にわたる中国山東省への出兵。

国民革命軍を率いる蔣介石(1926年) Wikipediaより

1927(昭和2)年5月、国民革命軍が中国を統一するために北伐を開始し山東省に迫ると、田中義一内閣は、満州軍閥の指導者張作霖を援助するため、在留邦人の保護を名目に出兵、青島や済南に進出した。

日本軍の出兵に対し蒋介石は内戦への干渉であると抗議し、国際的にも非難の声が強まった。

その後日本軍は国民革命軍が北伐を中止したのを機に撤兵したが、翌年4月、国民革命軍が北伐を再開すると再度出兵。

日本軍は青島、済南等に進駐して済南事件をひき起こし、さらに華北各地に兵力を展開したが、1929年3月、済南事件の解決文書に調印し、ようやく撤兵した。こうした日本軍の度重なる出兵に中国の抗日民族運動が激化した。

 

以下、詳しく。興味のある方はお読みください。

中国北部に勢力を持つ地方軍事政権(軍閥)を打倒するための戦いである北伐は、1926年より蒋介石率いる国民政府革命軍が広東を出発して北上し、長江(揚子江)流域に進出した後に北京を目指し、最終的には満蒙を含む中国全土の統一を目標とするものであった。

革命軍が列強の権益集中地を通過する過程で、民族権益回収を訴えた国民運動のため列強の在華権益との齟齬が生じ、中国と列強との軋轢を避けることは困難となった。

北伐は当初の軍閥打倒という目的に留まらず、各軍閥を支持している帝国主義列強の在華権益打破というもう一つの目的が明確になった。

これに対して、日本をはじめ列強にとっては在留邦人の生命財産の保護および特殊権益の保全が緊急の課題となった。

1927年3月、国民革命軍は上海・南京を占領したが、その際南京では、日本領事館に革命軍兵士が侵入して掠奪暴行を行い、領事館および避難していた居留民たちの財物が奪われ、領事館員らが負傷するという事件が起こった。

この事件により、各地の日本人居留民は、日本政府に対し陸軍の派兵、英・米との連携の強化を要望した。

国論は中国に対する「批判と懲罰」の風潮が次第に形作られていき、対中強硬論が高まった。

国内では、1927年4月17日、台湾銀行救済緊急勅令案を枢密院に否決され総辞職した若槻礼次郎内閣に代わって、同月20日田中義一政友会内閣が発足する。

田中内閣は、満州の特殊権益擁護と在留邦人保護という緊急課題に対して、軍事力による居留民の現地保護という新政策を採択する。

田中内閣は5月27日、出兵は居留民保護のため「自衛上已ムヲ得ザルノ緊急措置」と主張する政府声明を発表し、陸海軍の山東派遣を決定した。

1927年5月30日、関東軍の2千人が大連港を出発して、青島と済南を占領した。当時、青島には1.3万人、済南には2千人の日本人が居た。

日本の出兵に対して中国側は、青島・済南に租界を持たない日本が出兵を断行したことは二十一カ条政策の復活であるとして厳重な抗議を発した。

この間、田中内閣は出兵と並行しながら、同年6~7月にかけて、東京で中国政策の基本方針を決めるための東方会議を開く。

この会議の結果、中国への武力侵略を確認し、中国東北部(満州)を日本の支配下に置くとする「対支政策綱領」を決定した。

しかし、革命軍は徐州附近で挫折し北伐を中断したため、日本政府は派遣軍の駐留は必要なくなったとして、同年8月30日山東省から撤兵した。

1928年4月、蒋介石が北伐を再開し5月1日、済南に入城すると、田中義一内閣は再び出兵(第2次山東出兵)を行った。

5月2日に日本軍は済南に到着し、革命軍に総攻撃をかけ、8日より済南城攻略を開始し、これを占拠した(済南事件)。

さらに田中内閣は9日、援軍のためさらなる出兵(第3次山東出兵)を行い、済南全域を占領した。

済南を脱出した革命軍は北伐を続けて、6月に北京に入城、北京政府を打倒して北伐を完成させた。

そして全国統一を宣言し、11月にはアメリカ、12月にはイギリスが、関税自主権を認めて南京の国民政府(蒋介石政府)を正式に承認した。

山東出兵は、中国側の反発を招き、対日経済絶交運動が盛んとなった。各地で経済絶交、日中間不平等条約の撤廃、旅順・大連の回収、日本陸海軍の撤退等が叫ばれた。そして中国各地で反日会が結成され、対日経済絶交を決行した。

対日経済絶交運動は日本に対する経済的打撃を与え、さらに中国各地における日本産業にも影響をもたらし、日本人居留民の立場を苦しめた。

「居留民保護」を標榜する山東出兵は、却って居留民を追い詰める逆効果をもたらした。そして日中関係は悪化の一途をたどっていった。

昭和前半

Posted by kojiro